就業規則と人事評価制度の関係

就業規則,賃金規定

私のメインの仕事は人事評価・賃金制度の設計・導入・定着支援です。であるにもかかわらず、顧問先との取り組みにおいて真っ先に行うことは就業規則のチェックです。一見、人事評価・賃金制度と就業規則は無関係にように思えることでしょう。今日のブログでは、私がなぜ・どのような目的で就業規則のチェックを行うのか?の説明をしたいと思います。

 

人事評価・賃金制度の設計意図

人事評価・賃金制度の目的を改めて整理したいと思います。

①仕事を進める上での行動(発揮能力)や業績の基準を明確にすること

②限られた人件費を適正に分配する基準を作ること

③評価と処遇(昇格昇給・賞与査定等)を紐づけること

④評価者の恣意性を排除して公平・公正な評価を実現すること

⑤従業員が受け身にならず能動的に自らの能力開発や成果達成に向かって働くようにすること

私は以上のような目的を叶えるための手段として人事評価・賃金制度の設計を行っています。

これらの目的は、「従業員が成長することによって企業が成長する」という関係性の実現を目指していると言い換えてもいいでしょう。

苦役や義務としていやいや業務に向かうのではなく、自らの成長と企業の成長がリンクして処遇もそれに伴うということは「人は命令されなくても自らの成長を喜びに感じるものだ」という『性善説』に立脚した考え方でもあります。

そう。私の設計する人事評価・賃金制度は『性善説』に基づく思想で構築されたものとなっているのです。

もちろん、人事評価・賃金制度は信賞必罰・較差こそ平等が原則ですので、評価結果に関わらずすべての従業員が等しく昇給することや企業の業績が悪化しようが賞与を上げ続けるといった不条理には否定的な仕組みとなりますが。

 

就業規則の設計意図とは?

通常、どの企業においても就業規則に求めるものは企業と労働者の権利・義務を法的規範として定めること以上のことは考えておられないようです。私がこの5年弱のコンサルタント業務の中で関わってきた30数社の顧問先は例外なくそうでした。

むしろ、「山﨑顧問、当社では昨年に就業規則専門の社労士に依頼して作成してもらったばかりですよ?修正する必要なんてありませんよ。」とおっしゃる顧問先もありましたが結果的に関わってきた全ての顧問先の就業規則を修正することになりました。

このブログでも、就業規則の勘所については【就業規則・賃金規程】というカテゴリーを設けてポイント・ポイントの解説をしていきたいと思いますが、今回のブログではそもそも就業規則を設計する上での設計意図をどのように持つのか?がテーマになります。

私が就業規則を設計する上で最も重視しているのは『性悪説』に立脚して設計することです。

言うまでもなく就業規則とは企業と労働者の互いの権利と義務を規定したものであり、その内容は労働基準法をはじめとする関係労働法規を反映させたものでなければなりません。ここで注意しなければならないことは、労働基準法は労働者保護の性格の強い法律でありかつまた罰則付き強行法規ですのでそれに沿って何らの経営者の設計意図を就業規則に反映させていかないと、誠実労働義務の遵守という最も根本にある労働者の義務の履行とそれを果たし得ないときの労働者の責任の取り方を規定することができなくなっているということになるのです。

分かりにくい言い回しでしたね。

従業員数が増えてきたり事業運営の年月が積み重なっていく中で、ときにどうしても問題のある従業員の存在が生じてしまうことは避けきれません。残念ながら『性善説』で対応できる相手ではなく『性悪説』で対応しなければならないケースや期待した職能水準とかけ離れた採用のミスマッチなどが生じた時に、「如何に問題解決を図るか?」の備えを就業規則にしていくことが必要となるのです。

具体的なノウハウや就業規則への反映については追ってこのブログで解説していきますが、私の推奨する『性悪説』に基づいた就業規則の設計はネットの情報や他の社労士や弁護士からは得られない実務的・実践的な内容としてなります。

 

『性悪説』と『性善説』のバランス

雇用契約で企業と従業員の互いの権利・義務をもとにWin・Winの関係を築いていくためには「人は罰則を設けないと必ず悪いことをするものだ」という『性悪説』も「人は命令されなくても自らの成長に喜びに感じるものだ」という『性善説』の二者択一ではなく、同一の従業員に対して共に必要なものであるというのが重要なポイントとなります。

このような考え方のもと、私は就業規則は『性悪説』に立脚して、人事評価・賃金制度は『性善説』に立脚して設計しているのです。これらはバランスと整合性が重要でありどちらかに偏り過ぎた組織は必ず破綻するからです。

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