私は人事・労務管理の仕組み作りやその運用管理を生業にしていますが、様々な業種や規模そして業歴の顧問先との関わりの中で営利事業が成立し存続していくための普遍的な要件に気づかされます。
それは、営利事業を健全に営み続けるためにはどのような業種であっても事業規模であっても必ず3つの要件を具えていることが必要だという事実です。
その1.『営業力』
事業会社として成立するための第一の要件は言うまでもなく『営業力』でしょう。
ここで言う『営業力』とは「稼ぐ手段を有していること」を指します。
どんなにすぐれた管理手法を駆使しようがどれほど有能な人材を集めようが、事業会社である以上利益を生み出し成長し続けることが絶対条件となり、そのためには競合や同業他社と比べて競争優位性のある「稼ぐ手段を有している」『営業力』が無ければ言うまでもなく事業会社は立ち上げることすらできません。
弁護士を始めとする士業の方々が難易度の高い資格を取得しただけでは営業が立ちいかないことや、経営学を学んで論理的には経営の構成は理解しているつもりでもそれをもって起業し成功を収めることが難しいのはここにあります。
その2.『継続性』
優れたアイデアや商品開発能力を持ちそれをマーケットに問い評価される一連の行為を『営業行為』としましょう。この『営業行為』がマーケットに受け入れられ利益を生み出すということはマーケットのニーズに応えることができているからです。
しかしマーケットのニーズや技術は常に変化し続けており、今日の優れた商品が必ずしも明日の優れた商品であるとは限りません。つまり、『営業力』を保ち、増大させていくためには商品力を維持発展させていくための行為が必要になってくるのです。
世間では一世風靡した企業や商品が見る影もなく廃れていくさまはよく見受けられる事象です。
単発的にであってもマーケットに受け入れられるサービスや商品を生み出すことは容易ではありませんが、ヒットを飛ばしたからといってその成功に安住することは許されません。営利事業として事業運営していくということはゴーイングコンサーン(企業は永遠に継続していくもの)であることが求められるからです。
事業会社(企業)がゴーイングコンサーンであり続けるための2つ目の要件は優れた『営業力』を保ち続ける『継続性』となります。
生み出されたヒット商品がいつどのように陳腐化していくのか?の見極めはとても困難です。
そのヒット商品の成功体験が大きければ大きいほどそれを見直して新たな商品を生み出すことに憶病になるからです。
「変えるべきか?変えざるべきか?」
「変えるのは小規模な見直しでいいのか?それとも大胆に見直すべきなのか?」
営利事業を営む者にとって永続的で普遍的なテーマではないでしょうか?
しかし、これを巧みに行い続ける者が存続し続け成長し続けることができるのです。
その3.『人事力』
優れた起業者は例外なく高い『営業力』を持っています。
そしてその優れたサービスや商品の普遍性や陳腐化スピードに対応する柔軟な『継続性』いかんで優れた起業者はどれだけの期間ゴーイングコンサーンたり得るかが変わってきます。単なる一発屋に終わるのか?それとも10年・20年・30年と創業経営者の強いリーダーシップで事業を存続させ伸ばし続けるのか?
しかし、人間には寿命がありいかに天才的な経営者であってもその人頼りの属人的経営には限界が必ず訪れます。それは松下幸之助氏であっても本田宗一郎氏であっても井深大氏であっても稲森和夫氏であっても例外はありません。
あなたの営む事業が自分一代限りでクロージングするのであれば自分自身のできる範囲でゴーイングコンサーンであればいいでしょう。しかし、あなたの営む事業を将来にわたって存続させ世の中で価値を認められ続けたいと願うのであれば人を育てることで組織を成長させ続けることをしなければなりません。
企業を「法人」と称することや古い格言にある「企業は人なり」が示すことは、イノベーション(創造的破壊)を続けながらゴーイングコンサーンであり続けるには特定の個人ではなく、優れた組織風土や人事管理の仕組みの中から人材を育成しその数多の人材が事業を育てていくしかないのですから。
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