就業規則の押さえどころ ①試用期間

就業規則,賃金規定

前回のブログで就業規則は『性悪説』で設計すると述べました。

今回は不幸にして雇用のミスマッチが生じた場合への備えとして試用期間についてまとめていきます。

皆様の会社の就業規則では試用期間がどのように規定されていますか?私がこれまで見てきたところ、何ら意図することなく「試用期間は入社の日から3カ月間とする。」と規定しているところが大半でした。これのどこに問題があるのでしょうか?

 

試用期間とは?

かつて企業の人材採用は新卒一括採用で終身雇用が圧倒的な主流でしたが、いまやこの雇用慣行は時代遅れと言っても過言ではないでしょう。公務員や製造業などの一部の業種にはまだまだ新卒一括採用が多いとはいえ、これらの職場においても即戦力の中途採用が増えてきており『70才定年制』が視野に入ってきた現状や今後においては長い職業人生において何度か勤務先を変えることはごくごく普通のこととなっていきます。

新卒一括採用で職務経験の無いまっさらな新人を雇用する場合と違って、即戦力の中途採用の場合には労働者は自らのキャリアやスキル、前職での賃金などをベースに新たな勤務先での賃金を求め、企業側はその賃金にふさわしい発揮能力や成果を期待することになります。

雇用契約とは、企業が賃金を主とする雇用条件を提示し労働者はその条件にふさわしい労働力の提供をしていくことの均衡がとれた状態を目指したものになりますが、新卒一括採用でずぶの素人を雇用する場合とは違ってこの均衡が取れているかどうか?その均衡は容認できる範囲に収まっているかどうか?を査定するための期間が試用期間ということになります。

 

解雇の難易度は極めて高い

一旦雇用契約が締結されると、雇用のミスマッチや労働者の問題行為があっても会社側から一方的に解雇することは極めて困難となっています。

私の顧問先でも年に5~6件くらいは毎年のように「山﨑顧問、どうしても**さんをクビにしたいのですが…」という相談を受けます。話を伺ってみると企業が求める発揮能力や成果が期待できないギャップよりも懲戒事由に触れることなども多々あるのですが、如何に企業側がその非違行為を主張したところで懲戒解雇に処することはまずできないと考えてください。懲戒解雇のハードルはとてつもなく高く無理に進めると企業が法的な手段で訴追されまず負けることになりますので。

懲戒解雇の難しさや問題社員への対処方法はまた別の機会にまとめますが、今回は即戦力を期待して採用した中途採用者への期待能力や企業への適性が極めて期待を下回る場合には試用期間満了による普通解雇をしていくことをお勧めする内容となっています。

試用期間を漫然と過ごしてしまうのではなく、企業側はその労働者に期待する発揮能力や企業への適合能力をしっかりと見極めることが求められるのです。多少は期待したものと実態に乖離があることが普通であり、人材を採用する際の企業側の心理としては「欲しい」が先走ってしまいついつい甘めの評価で迎え入れることが多いのも事実ですので安易な試用期間満了での普通解雇もしてはなりません。

私がこのブログで皆様にお伝えしたいポイントの一つとして、本採用した後に雇用のミスマッチを痛感したところで解雇はまずできないこと。解雇を強行した場合には法的リスクのみならず残っている従業員からの企業への不信感が高まるリスクも覚悟しなければならないこと。それに比べた場合、試用期間を通じた評価で期待能力の著しい乖離や企業への適合能力の致命的な課題があるような場合には試用期間満了による普通解雇は本採用後に比べたらリスクが少ないということです。

はじめのボタンを掛け違えてしまえば、いつまでたってもボタンは正しくは留めることはできないのですから、勇気をもって試用期間の評価を行い、安易に本採用しないことが重要になってくるのです。

 

就業規則での試用期間の規定の仕方

即戦力を期待しての中途採用においてはどうしてもある程度の雇用のミスマッチは発生してしまうものだという前提に立つ必要があります。

その場合、3カ月という試用期間であなたはその人物の能力や組織への適合能力を見極めることができるでしょうか?しかも入社日から3カ月経過日で解雇するとなると解雇予告期間の30日前予告が労基法上求められることからすると実質的には入社日からたったの2カ月で解雇を判断することが求められるのです。

私はこれはほぼ不可能だと思っています。

たったの3ケ月で雇用契約を解除するだけの判断をすることは極めて困難です。しかし、のちに雇用のミスマッチが顕在化して前述のように「山﨑顧問、どうしても**さんをクビにしたいのですが…」というような状況になる労働者はこの3カ月の間であってもその兆候は明らかになっていることが大半ではないでしょうか?

私が顧問先の就業規則をチェックして修正するポイントのひとつである試用期間の規定への対処方法としては、試用期間を3カ月と固定化するのではなく、半年程度まで延長の余地を謳った規程とすることがその答えとなります。

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