ポストコロナウイルス騒動を見据えて

時事問題,コラム

このブログを書いている5月2日時点での報道によればどうやら緊急事態措置による活動自粛はあとひと月は延長される模様ですね。

BtoCの小売業を始め日銭の収入が(ほぼ)断たれて事業存続の危ぶまれる企業が数多く発生し、新型コロナウィルス騒動が終息した後には一旦破たんした事業や企業は簡単にはまた立ち上げることができなくなるのでこの状況が続くことを深く危惧しています。

そのようなまだ底の見通せない状況の中ではありますが、私の顧問先の中でも今回の新型コロナウィルス騒動によっていとも簡単に破たんしてしまう事業と持ちこたえることのできる事業との違いが浮き彫りになってきました。

ここでは業種による逆風の強さという観点ではなく、同じ業種の中でも急激な業績悪化への耐性の強い企業の特徴を私の視点でまとめてみたいと思います。

 

損益分岐点売上高の低い収益構造

リーマンショック・3.11・今回の新型コロナウイルス感染症と、我が国においてここ12年の間にとてつもなく大きな外的要因で経営基盤が揺さぶられる出来事に3度見舞われました。首尾よく今回の新型コロナウイルス騒動を乗り切ったとしてもまた近い将来に大型地震や未知なるウイルス感染症などの大きな外的要因に見舞われると思って備えておく必要があります。

このようなとてつもなく大きな外的要因による急激な業績悪化時に耐性の高い事業の大きな特徴のひとつとして損益分岐点売上高の低い収益構造が挙げられます。

これをもっと掘り下げて言えば、費用構造の中で『変動費』の占める割合が高く相対的に『固定費』の比率が低い収益構造となります。『変動費』を正しく把握することで損益分岐点売上高を導き出すことはできることは前回のブログでも触れましたが、それでも自社にとって何が『変動費』なのか?どうすれば変動費率を高めることができるか?が今回のテーマになります。

さまざまな業種の事業がありますので一概には言えませんが、多くの事業にとって費用の多くを占める項目が『人件費』であり『地代家賃』でしょう。こと商業や多くのBtoCの事業にとってはこの2つの費用が中心になるはずです。今回はこの2つの費用に焦点を絞って展開していきます。

 

『人件費』の構造に手を入れる

『人件費』はいくつかの切り口で分類することができます。

一つ目は、無期雇用の従業員(正社員)と有期雇用の非正規従業員(パートタイマーやアルバイト)という切り口で、シビアな見方をすれば有期雇用の非正規従業員の人件費は非常時には『変動費』となり得るものと捉えます。

もちろん非正規雇用従業員だからといって安易な雇用調整はすべきではありませんが、そもそも無期雇用契約と有期雇用契約の違いは業務量(売上高)の増減への機動的対応といった性格が有期雇用従業員には求められます。

この考え方をさらに一歩進め、従来は深く考えずに無期雇用の従業員(正社員)を前提としていた比較的高度な業務領域にも業務委託(外注)の選択肢が今後は更に大きくなっていきます。アウトソーシングという見方もできます。正社員でなければならない業務や職責はどれだけあるのか?を既成概念を取っ払って検討する必要があります。

この業務委託(外注)・アウトソーシングも費用コントロールの性格上、広義の意味での『変動費』と位置付けることができます。

二つ目には、賃金の支払かたがあります。

固定費たる給与と変動費たる賞与のグランドデザインです。

私は戦略無き安易な昇給には賛成しかねます。

ここしばらくの最低賃金の動向や海外からの労働力獲得に必要な賃金水準の確保といった理由から一般的な企業の昇給率は2%程度となっています。

競合他社との競争力という観点から少なくとも1.5%前後の昇給率は確保しつつも、賃金構成のグランドデザインを考えるにあたっては年間報酬額を固定費たる給与と変動費たる賞与の比率をどのように設定するのか?が重要になってきます。

詳細はまた別の機会に掘り下げて論じますが、私のお勧めする比率としては年間報酬額に占める固定費たる給与総額3に対して変動費たる賞与総額1の割合です。

例えば源泉所得額が400万円の従業員の場合で給与総額が300万円(月額25万円)で賞与総額が100万円となります。この賞与総額の100万円は企業の業績や個人の評価によって増減します。

 

『地代家賃』の構造に手を入れる

これは現段階では私の想像に過ぎませんが、私が不動産賃借をして事業をしている立場であれば、今回の新型コロナウイルス騒動が収まったらじっくりと貸主と交渉すべきポイントとなります。

私がかつて籍を置いていたアパレル事業において優良な商業施設であるルミネなどとの賃貸借契約は、最低保証賃料+売り上げ歩率という契約になっています。言い換えれば『固定費』+『変動費』となっている訳ですね。これは貸主と借主が運命共同体であり相互の努力によって商いが上手くいくことを企図した仕組みとも言えます。

しかし、雑居ビルの飲食店や路面店での賃貸借契約はどうでしょうか?おそらく大半は固定賃料でしょう。借主たる事業者にとって固定賃料は損益分岐点売上高を超えれば超えるほど収益性が高くなるメリットがある一方で今回のような急激な売上高の減少の際には一気に固定賃料が重くのしかかってくることになります。

外的要因による急激な売上高の減少が生じることがないのであれば、自社の事業の競争力を高めることで固定賃料であればより大きな収益を見込むこともできますが事業はゴーイングコンサーンであってギャンブルではありません。強い事業だから生き残るとばかりは言えないのです。環境変化に対応できるものが生き残ることができるのです。

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